江戸の鎖国時代、日本で唯一の世界との玄関口であった長崎・出島。
その名を冠して、2023年12月ONE DEJIMAが設立されました。
実はこの会社、コンテナ海運会社ONEの長崎支店、ということではありません!
現在はONEの業務委託先として営業していますが、将来的にはONE以外の会社からも業務を受託し、グローバル企業を支える存在になることを目指す、全く新しい会社なんです。
そこで今回は、ONE特派員がONE DEJIMAに出張!
ONE DEJIMAを率いる遠山直人社長と現在のメンバーに、ONE DEJIMAとは何をしているところなのか、どんな思いをもって働いているのかについて聞いてきました。
まずは、ONE DEJIMAを率いる遠山の人物像と、社長就任までの経緯に迫ります。
そのキャリアのスタートは船会社ではなく、自動車会社のシステム部門。入社3ヵ月目にポーランドへ出張、そこから3カ月後にはフィリピンへ長期出張し、その後はタイへ赴任。会社が海外での事業拡大を進める最中、様々な国でシステム構築のプロジェクトに奔走する、目まぐるしい日々を送ることになりました。
そんな中でも、大きな充実感を感じていたといいます。
「入社後右も左も知らない中で正直大変だったのですが、ビジネスの躍動感みたいなものを日々感じられることは楽しかったです。日本の企業が海外に進出する。グローバル経済の循環の中にいて、自分がその一部を担っていると思うと興奮しましたね」
この“躍動感”に魅せられ、8年間の自動車会社での勤務を経て転職先として選んだのが海運会社でした。
前職の経験を生かし、まずは自動車船を担当。その後は情報システム関連担当として国内外問わず活躍します。2016年からはコンテナ船事業統合プロジェクト(= ONEの立ち上げ)に参加。約1.5年という短期間で、新会社ONEのITシステム導入やインド・フィリピン等でのBPO(Business Process Outsourcing)オペレーションを世界規模で進めるという極めて困難なプロジェクトで、2018年の開業直後は大きな混乱に見舞われましたが、その最前線に立って何とか乗り越えます。
ONEはその後、コロナ禍の混乱も乗り越え、グローバルなコンテナ海運会社として持続的な成長を目指すフェーズを迎えました。その成長戦略の一環として新会社ONE DEJIMAを長崎に設立する構想が浮上。その社長として遠山に白羽の矢が立ちます。
「出世だけを考えるのであれば前職を退職しなくても良かったのかもしれません。しかし、残りの自分のキャリアを考えた際、ビジネスの躍動感を感じながら未来を描き実行する仕事をしたいと思いました。そんな中、ONEからのオファーはまさに僕がやりたいことと一致しており、お話を頂いたときはその偶然に大変驚きました」
こうして、ビジネスの躍動感を求める男、遠山は新会社・ONE DEJIMAの社長に就任することとなったのです。
2024年4月に営業を開始したONE DEJIMAは、「地域発のグローバルKPO会社」をコンセプトとしています。KPOというと聞きなれない単語ですが、Knowledge Process Offshoring(ナレッジ・プロセス・アウトソーシング)の略称で、「企業の中核業務の外部委託」を意味します。シンガポールに本社を置くONEの事業運営をサポートするさまざまな専門的業務を、長崎の地で受託し遂行しています。
「ONEが今後も持続的に成長し続けるためには、何より優秀な人財をグローバルで多く確保しないといけません。しかしシンガポールだけで見ても、成長を支えるに足る十分な数の人財を確保するのは難しい。一方で日本に目を向けると、地方にはまだまだ眠れる人財が数多くいると思います。ここに、ONE DEJIMAが活躍できるフィールドがあるのではと思いました」
受託している業務の1つが、人事関連業務です。
現在は人事関連業務の一部の業務を受注していますが、将来的には人財育成や評価報酬などまで人事部において幅広く受注範囲を拡大していき、より中核的な業務を受託できるような専門性を持つことを目指します。シンガポール本社からの業務の引継ぎやイベントの共同開催などでこれまでのノウハウを共有しつつ、ONE DEJIMA主体での採用活動も積極的に推進。同様の形で代理店管理・会計業務、市場調査・分析業務なども受託を開始しており、それぞれの分野で専門性を磨いています。実際に業務を開始してみると、「こういった仕事は引き受けられないか?」と他にもさまざまな相談が寄せられ、受託する業務の幅は着実に広がっています。
ところで、日本国内のなかでもどうして長崎に?その端的な答えは「ご縁」と「ロマン」だと言います。
「長崎は、これまでも様々なイベントで協力関係を築いてきたご縁があったんです。『出島組織サミット』にONEが招かれたのを機に、シンガポールと長崎で計3回、ONE主催で『コンテナ海運サミット』を開催してきました。また、長崎自体がもともと、海運にとってもゆかりのある土地。鎖国していた中でも唯一海外との窓口があったこの地で、また海運の歴史が始まったこの地で、海運の新たな取り組みを行う。これはロマンのあるストーリーだと思いましたね」
第1回コンテナ海運サミットの様子
それに加え、「地方から日本を元気にしたい」という思いもありました。
「近年、日本の国力が弱っているとよく言われますが、その原因の1つは人も仕事も大都市圏に集中していることにあると思っています。そこで、地方都市から生まれたグローバル企業を立ち上げ、ロールモデルになりたいなという考えがありました」
そんなONE DEJIMAのスローガンは、「長崎から、世界を支える。」彼らはONEだけではなく、世界を支えることを目指しています。一体どういうことなのでしょうか?
ONE DEJIMAのロゴ。漢数字の「一」、ローマ数字の「1」、外に「出る」ことがモチーフ。
現在ONE DEJIMAがONEから受注している人事、財務、調査等の業務は、海運業界の特有のものではありません。ということは、それらの専門性を磨くことができればONE以外の企業からも幅広く仕事を受注することができると言えます。専門性を磨き、国内外のグローバル企業の依頼に応え、それによって世界のビジネスを支えていく。「長崎から、世界を支える。」というスローガンにはそんな意志が込められています。
このような企業に成長していくために、ONE DEJIMAへの採用にも力を入れています。
立ち上げ段階の会社で自ら新しい仕事に挑戦できるバイタリティのある人や、既に専門知識を持ちそれをグローバル企業で活かしてみたい人、そのような人財がいれば年齢・性別・国籍を問わずどんどん採用。その甲斐もあって、開業したばかりのオフィスが、半年足らずでもう手狭に感じられるほど、活気溢れる会社になってきました。
「とにかくバイタリティとグロースマインドが大切だと思っています。新しい会社として、挑戦し続けなければいけませんから。『AS ONE, WE CAN.』の精神で、一致団結でやっていきますよ」
2024年のビジョンは、
「いろんな人と、いろんな知恵をつなげあって、長崎から世界を支える。」に決定。
長崎の地に再び誕生した「DEJIMA」の挑戦はまだ始まったばかり。
かつての出島がそうであったように、「どんなに小さな存在でも、世界という大きな舞台へ出ることができる」と信じて、世界を支え、日本を元気にするべく、今日もONE DEJIMAは躍動しています。
挑戦が始まったばかりのONE DEJIMAにはどんな社員が集まっているのでしょうか?3名の社員に、どんな想いで入社をし、働いているのかを聞きました。
● 毎日が新しくてワクワク。
「長崎から世界を支える」人財の採用で、地域を盛り上げたい(池元 理香子さん)
「私は、生まれも育ちも長崎です。これまでは保険業界で営業や事務をしていたのですが、『ONE DEJIMAという会社ができる』という話を家族から聞き、詳しく見ていくうちに『全く新しい仕事ができそう!』と思って入社を決めました。入社してからも、会社を新しく作り上げている日々がとても新鮮で、ワクワクしながら働いています。今は採用業務を担当していて、中途採用や、再来年開始予定の新卒採用、さらに学生のインターンシップも準備中です。まず自分は人事領域の力になれるように専門知識や英語を頑張りたいと思っています。
ONE DEJIMAと『長崎から、世界を支える。』のスローガンがもっと認知されて、就職したいと思われるように。ONE DEJIMAから長崎、世界を盛り上げていきたいです」
● 地元長崎での新しい挑戦は、きっと運命。
超国際派のキャリアで支える(島津 厚子さん)
「長崎で生まれ育ち、その後は東京〜シンガポール〜長崎~東京〜スコットランド、と国内外を転々としてきました。24年の春に家庭の事情で地元長崎へ戻ることになり、何か自分の国際業務経験を生かせる仕事はないかと考えていたところで運命的に出会ったのがONE DEJIMAの求人でした。すぐに応募して、運良く入社できました。
いまは経営企画グループに所属し、”なんでもやります”要員です。新造船のドキュメントコントロール業務など、今までのキャリアを生かせる場面も多いですね。『長崎から、世界を支える。』というスローガンと、Think GLOCAL(グローバルな仕事をしながら、ローカル/地元に根ざす)というONE DEJIMA 独自のコアバリューを大事に、日々の業務を行っています」
●流れ着いた、ONE DEJIMA。
コミュニケーションで切り拓いていく(平原 望海さん)
「私の出身は愛知、大学は東京と、長崎には縁もゆかりもありませんでした。新卒で就職した会社を退職し、1年間ほど海外に旅に出ていて、日本に戻ったタイミングでたまたまONE DEJIMAの求人を見つけたんです。得意の英語を生かせる企業で働きたかったので入社し、未踏の地である長崎市に引っ越しましたが、今では歴史・自然・食文化豊かなこの町が大好きになりました。
担当業務は、エージェンシーアカウンティングといって、今はシンガポール本社から会計業務の一部を受託しています。シンガポール本社の方とのやりとりが多いため、とにかくまずは仲良くなろうと積極的にコミュニケーションをとるようにしています。本社の方がONE DEJIMAに来た時も案内役を買って出ました。ONE DEJIMAは、会社の空気がとても活発なところが好きです。ただ、いまは私が最年少なので、もっと若い人も入ってきて欲しいですね。DEJIMAをさらに若い力で、長期的に発展できるようにしていけたらいいと思っています」
ONE DEJIMA代表取締役社長。
コンテナ船事業統合プロジェクトのBPOオペレーション担当等を経て、2024年2月、ONE DEJIMA代表取締役社長に就任。
ONEの存在を世の中に伝えるために、あらゆるプロジェクトに密着する特別報道チーム。ONEのビジネスや、海運・環境を考える姿勢を伝えるべく、プロジェクトについて気になる「なぜ?」「なに?」を掘り下げていく。