横浜港をゆっくりと出港していく、1隻の大きなコンテナ船。マゼンタに塗装された巨大な船体と、両側をONEのコンテナで埋め尽くした姿はまさに圧巻です。この船の名前は「ONE Sparkle」。今年2月に完成したばかりの最新のコンテナ船です。でもこの船、単に新しいだけではなく、実はONEにとってとても重要な意義を持つ船でもあるんです。一体どんな存在なのか・・・今日は撮影の舞台裏とともにお届けしましょう。
2025年3月31日のお昼少し前。数カ月にわたる撮影の準備期間を経て、私たちONE特派員チームは、横浜港大さん橋の通船発着場で待機していました。
撮影で狙うのは、その日の午後に横浜港を出港するコンテナ船「ONE Sparkle」。2月14日に命名式を終え、ONEの船隊に加わったばかりのこの船は、中国や韓国の港を経て3月30日の夜、横浜港南本牧コンテナターミナルに到着していました。
その日は風が強く、雨も心配される空模様。しかし今回が初の航海である「ONE Sparkle」は、船の両側に積載するコンテナをマゼンタ一色に揃えた特別仕様で横浜港にお目見えしています。この日を逃してしまったら、せっかくの晴れ姿を撮影するチャンスは二度とありません。
時間が来ると、予約していたボートに乗り込んで、いざ出発。
撮影に協力してくださったポートサービスさんの通船
強風による揺れに耐えながら、通船に乗って進むこと約20分…
たくさんのコンテナや立ち並ぶガントリークレーンの向こう側に、ひときわ目立つ1隻の船が見えてきました。
南本牧コンテナターミナルの海側から回り込むと、本日の主役といよいよご対面です。
カメラのレンズに収まりきらないほどの巨体。
目の当たりにすると、本当に「大きい」以外の言葉が出てきません。
ONEがこの船の発注を発表したのは2022年5月。日本と韓国の造船所に各5隻、計10隻のコンテナ船を発注(その後、さらに10隻を日本の造船所に発注)しており、この20隻シリーズの第1船が「ONE Sparkle」です。発表から約3年後の今年2月14日、韓国のHD現代重工業・蔚山(ウルサン)工場で命名式を迎え、その後無事に竣工しました。
全長336m、幅51mと、東京タワーを超える大きさ。デッキ上に積まれるコンテナの高さは最大で11段にも達し、1万3900TEU(1TEU=20フィートコンテナ1本)ものコンテナを一度に輸送可能です。現在は、アジアと中南米を結ぶ国際定期コンテナ航路に就航しており、アジアでは日本や中国、韓国に、中南米ではメキシコやチリなどに寄港しています。
さてこの「ONE Sparkle」、ONEにとって単に最新のコンテナ船というだけではありません。ONEが2018年4月に事業運営を開始して以来、初めて自社で保有し、運航する新造コンテナ船であり、同時により環境に優しい、サステナブルな未来を見据えた象徴的な存在でもあります。
ここで少しだけ、専門用語も交えて説明させてください。
「ONE Sparkle」の特徴は、「アンモニア・メタノールレディ」仕様であること。これは将来、より環境に優しいアンモニアまたはメタノール燃料へ切り替えるための設計を予め備えている、ということを意味します。
「めざせ、温室効果ガス排出ゼロ!2050年に向けたONEの挑戦」でも紹介した通り、ONEはより環境に優しいコンテナ輸送の実現に向け、全力で取り組んでいる最中。将来、次世代燃料に切り替えできるタイミングが来た段階で素早く改修工事を行い、より環境に優しいコンテナ船として生まれ変わります。
また、船首に搭載するウィンドシールド(風防)により、航行中の風の抵抗を減らして燃費性能を向上。白地にONEのロゴが映えています。
他にも、港に停泊中に、陸側から電力供給を受けるための設備(陸電設備、AMP=Alternative Maritime Powerとも呼ばれる)も備えています。船は停泊中も電力を使用するため、これまでは港内でも発電機エンジンを動かしたままとなっていることが一般的でした。しかしこの設備があれば、停泊中に陸側から電力を受け取り、その間は発電機エンジンを止めておくことで、港周辺の環境への負荷を減らせるというわけです。
心配されていた天候もなんとか持ちこたえ、撮影は無事終了。
タグボートに曳かれ、横浜を出港した「ONE Sparkle」は徐々に速力を上げ、この後は一路、メキシコのエンセナダを目指します。
既にONEの船隊の一員として活躍する「ONE Sparkle」ですが、その後、韓国や日本の造船所からは続々と姉妹船が竣工し、ONEの船隊に加わっています。
ある船は、「ONE Sparkle」と同じ南米航路に、他の船は太平洋航路に。1万3900TEU積みという大きさは、世界の様々な航路に柔軟に投入できる、非常に汎用性の高い船型です。しかも彼女たちは2500基もの充実したリーファープラグ(冷凍・冷蔵コンテナ用電源)を備えており、食料品をはじめ温度管理が必要な貨物を多く運ぶことも得意です。これから先、きっと世界のさまざまな海で活躍してくれることでしょう。
その後、私たちのもとに素敵な写真が届きました。
南米での目的地の1つ、コロンビアのブエナベンチュラ港に寄港した「ONE Sparkle」の姿です。雄大な夕日を背景に、コンテナターミナルのライトに照らされ浮かび上がった姿は、とてもロマンチックですね。
国から国へ、港から港へ。港や道路でコンテナを見かけたとき、こうして世界の海を旅して貨物を運び続けるコンテナ船たちのことを、ちょっとだけ思い出してくれたら嬉しいです。
ONEの存在を世の中に伝えるために、あらゆるプロジェクトに密着する特別報道チーム。ONEのビジネスや、海運・環境を考える姿勢を伝えるべく、プロジェクトについて気になる「なぜ?」「なに?」を掘り下げていく。
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